東北エリアの企業課題を解決し、新しい働き方を実践するモデル拠点「ITOKI DESIGN HOUSE SENDAI」として生まれ変わったイトーキ仙台支店。本社で培った「働き方・居心地」のノウハウと、仙台独自の「地域性」を掛け合わせ、地方都市におけるこれからの働き方を発信するオフィスが誕生した。
地方都市が抱える企業課題の解決を目指して
はじめに、移転の背景と経緯を教えてください。
有賀: 私たちがまず着目したのは、東北エリアをはじめとする地方都市の企業課題として挙げられる、深刻な人手不足です。首都圏の本社と地方の支店とでオフィス投資に格差が生じているケースも多く、人材を惹きつけ、定着させるための魅力的なオフィスが求められていました。
小野: 旧仙台支店も例外ではなく、老朽化による快適性の低さや、オフィス内で回遊が生まれずコミュニケーションが偏るといった課題を抱えていました。さらに、これまでは家具のショールームとしての役割が強かったため、地域との接点が希薄だったことも課題として感じていたのです。
有賀:これらの背景から、①東北エリアの企業課題を解決できる施設をつくること、②移転前のオフィスが抱えていた働き方の課題を解決すること、③機能的でデザイン性の高いオフィスを作り、東北企業のオフィス市場を牽引していくこと、④新しい働き方を実践し、新しいビジネスを生み出していくこと、の 4 つの目的を設定し、プロジェクトがスタートしました。
仙台の情景や東北の伝統を散りばめた空間デザイン
新しいオフィスのコンセプトと、デザインの特徴を教えてください。
有賀: コンセプトは、「ITOKI DESIGN HOUSE」の地方初拠点として、日本橋で実践している「働き方・居心地」のノウハウと、仙台独自の「地域性」を掛け合わせ、地方都市における「これからの働き方」を発信する拠点です。
空間デザインでは、仙台の定禅寺通りの情景をモチーフに設定。天井に吊るした金属メッシュの裏側から照明を当て、床には木漏れ日の影を表現した床材を使用することで、ケヤキ並木の木漏れ日が降り注ぐ様子を演出しています。さらに、大きな窓面と恵まれたロケーションを最大限に活用し、隣接する教会や街の景色、自然の移ろいを感じられる開放的な空間としました。
小野: また、働く人が地元に対する愛着や誇りを深め「ここで働き続けたい」と思えるよう、オフィス空間に地域の資源や文化を取り入れています。たとえば、青森の伝統工芸である「こぎん刺し」の作家と協働し、吸音パネルやクッションカバーをオリジナルで制作。オフィスの壁面には秋田県産スギ材、入口の取っ手には岩手の南部鉄器を採用したほか、チェア「vertebra03」の張地には宮城の「ずんだ」をイメージしたカラーを取り入れ、仙台のJAZZ文化を感じさせるレンガを用いるなど、東北ならではの要素を随所にちりばめました。また、民間企業が運営する仙台市の図書施設と協働し、定期的に選書が入れ替わるライブラリーエリアを設けた点も特徴のひとつです。
さらに、エントランスの壁面には東北6県の未来に残したい風景を描いたアートを施し、お客様との会話が自然に生まれるコミュニケーションのきっかけとなるようデザインしています。
回遊と交流が生まれる、多様でオープンな空間設計
働き方の課題を解決するための、空間設計の工夫を教えてください。
有賀: 旧オフィスの課題だった「コミュニケーションの偏り」を解消するため、壁を立てず、オフィス全体を見渡せるオープンな設計にしました。空間の中心には人が集まるカフェラウンジや大型モニターを設置し、移動の動線上で自然な声がけが発生しやすくなることで、組織の一体感や連帯感を醸成する狙いです。
そして、ビッグテーブルやソファ、カウンターを備えた「Co-Work」、窓向きの集中席「Focus」、木漏れ日を感じながらリラックスできる席「Recharge」など、その日の業務内容に合わせて選べるよう、席のバリエーションを拡充しました。「どの席でも快適に働ける」という機能性と居心地を担保したことでオフィス全体を有効活用できるようになり、移転前より面積は縮小したものの、社員の満足度は向上しています。
また、窓際の一角は床を一段上げ、視線が高くなる作りにしました。普段は執務や打ち合わせで利用していますが、オフィス全体を使ったイベントや勉強会の際には、会場全体を見渡しながら参加できる場所としても機能します。
デザインの力で「選ばれる職場づくり」を
プロジェクトを振り返っての感想と、今後の展望をお聞かせください。
有賀:今回は、「自分たちがこれからどう働くべきか」という根本の部分から社内で議論を重ね、空間デザインへと落とし込んでいきました。プレッシャーこそありましたが、東京のデザインラボのメンバーや施工担当者と日々話し合い、挑戦的なデザインも妥協なく実現できたのは、自社拠点だからこそ得られた経験だと思います。
小野: 移転後は、家具のショールームとしてではなく、新しい働き方のコンセプトや地域性の表現そのものを体感しに来るお客様が増えています。東北地方で活躍するクリエイターの方々など、地域との新たな繋がりが生まれたことも大きな成果です。
有賀: 今回の自社拠点での挑戦やクリエイターとの協働で得た知見は、私たちにとって大きな武器になりました。このノウハウを活かし、空間デザインの力で「選ばれる職場づくり」を実現することで、地方のオフィス市場を牽引していきたいと考えています。
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