​​ひとの暮らしをつくるように、オフィスをつくる

​​—はじめに、オフィスのコンセプトを教えてください。​​

​​島村：「TOCHI TATEMONO SUMAU」です。土地の活用、建物の運営、賃貸住宅の管理といった資産運用、ひとの暮らしを提供する東急住宅リースさんの事業を、3つの単語で包括的に表現しました。​ 

​​デザインに落とし込む際、はじめに着目したのは「土地に建物を建て、そこで人が暮らす」という家づくりの流れがオフィスづくりと似ていること。そこで、入居するフロアを土地に見立てて等高線を引き、道を通したうえで、建物を一棟ずつ建てるようにレイアウトを考えていきました。最も象徴的なのは、等高線を象ったフロアの貼り分けや窓際のベンチです。​ 

​​また、より多様な働き方を叶えるために、コラボレーションやソロワークといった目的別のエリアを充実させました。オフィスをぐるっと回れる動線設計にすることで、1箇所に留まることなく自然な回遊を促します。

​​開きすぎず閉じすぎず、心地よい距離感で

​​—壁が見え隠れするレイアウトが特徴的ですね。​​

永峯：はい。広いオフィスに什器だけでレイアウトすると平坦な印象になりますし、開放的すぎてオフィスワーカーにとっては周囲の視線が気になり落ち着かないので、程よい仕切り感のある間仕切りを設置して空間全体を構成しました。とはいえ空間を隔てすぎると見通しが悪くなってしまうので、仕様や配置を工夫して、それぞれ区切られながらも働きやすいオープンな雰囲気を残しています。​ 

​​パーティションは8種類ほど​​制作し​​ました。目線の高さを抜いたり、エキスパンドメタルを配したりして閉塞感をなくしつつ、隣り合うエリアと程よい距離を取り、囲われ感をつくっています。​ 

​​「TOCHI」と捉えたオフィス全体を街で区画するようにパーティションを設置することで、建物が建ち並んだような風景を作ることができました。併せて、会議室のサインは「TATEMONO」から連想して電柱の街区表示板風にデザイン。実験的な取り組みでしたが、今までにないコンセプチュアルなオフィスを作れたと思います。

​​どこを切り取ってもコンセプトを感じられる空間へ​​

​​—レセプションエリアにも一貫したコンセプトを感じました。

島村：来客用エントランスから見える壁をあえてずらして建てることで、住宅が立ち並ぶ奥行きと、一つひとつの建物の中（壁の陰）で人が活動する様子を感じ取れるようにしています。そして、正面にはフレーム状のサインパネルを設置。このオフィスで暮らし、働く人たちの活動を風景として切り取ります。​ 

​​加えて、住宅ならではのスケール感やマテリアルを取り入れ、東急住宅リースさんらしさを表現している点もポイントです。白と木を基調とした、明るく親しみやすい雰囲気に仕上げています。​ 

​​また、エントランスにあるサインパネルの奥には、従業員同士やお客様との打ち合わせに利用できるオープンなエリアがあり、そこには等高線を象った照明を配置しました。コンセプトにある「TOCHI」を表現するだけでなく、広い空間のアクセントとしても機能しています。

​​カジュアルな交流を生むコラボレーションエリア​ 

​​—コラボレーションに特化したエリアがあるのですね。 

​​齊藤：はい。6階のレセプションエリアに対して、7階には社員で集まれる​​コラボレーションエリア​​を設けました。社内イベントの会場としてのニーズに合わせて、等高線を象ったベンチを境に、従業員同士が内を向いて集まれる設計にしています。多様なコミュニケーションの形に対応するために、あえて高さの異なる椅子を置いている点も特徴です。​ 

また、街中の公園をイメージして、ボリューム感のある家具や温かい色使いで執務エリアとの差を演出しました。他エリアとの親和性を持ちながら、公園で目にするグリーンや明るい色味を多く取り入れています。​ 

そして、等高線のラインがそのまま盛り上がったような形状のテーブルなど、コンセプトに沿った造作家具も制作。天板の厚みや色の調整を繰り返して、遊び心のあるデザインながら、実用的なプロダクトを作れたと感じています。

Photo：人物写真はイトーキオフィスにて撮影
Interview：2023.12​
PM会社：株式会社東急Ｒｅ・デザイン