「共創」を生み出す拠点へ
ITOKI DESIGN HOUSE SHIGA
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Design Concept

築30年を迎えた、イトーキのマザー工場である滋賀県近江八幡市のチェア工場を、「ITOKI DESIGN HOUSE SHIGA」としてリニューアル。社内外のパートナーが混ざり合い共創する「開かれたものづくり拠点」を目指した。

地域素材を取り入れたデザインによって、ものづくりの現場ならではの設計思想が息づくオフィスへと生まれ変わった。

2年かけてたどり着いた「共創」というコンセプト

はじめに、プロジェクトの経緯とコンセプトをお聞かせください。

武田:築30年を迎えたチェア工場のリニューアルプロジェクトが立ち上がり、「業界をリードするものづくり拠点」というミッションを掲げました。

その他にも、製造拠点特有のエンゲージメント課題や人材定着の難しさを解決するという目的もありました。

プロジェクトの当初は従業員アンケートと上層部インタビューをもとにオフィス案を作成しましたが、従来の課題解決型の発想にとどまっているという指摘を受け、方向を転換。そこで得た知見を土台としながら、「ありたい姿から逆算する」という新しい視点を取り入れて両面から考えました。工場メンバーが複数の企業を視察し、開発フローを問い直したうえで、改めて上層部への再ヒアリングも実施して設計に入りました。

吉野:プロジェクトを通じて対面での対話を重ねる中で、工場メンバーの意識が少しずつ変わっていきました。最終的に、たどり着いたコンセプトが「共創」です。社内外のパートナーが混ざり合う、開かれたものづくり拠点を目指しました。

4層のグラデーションと「デザインをしない」デザイン

「共創」のコンセプトを1階から4階までの空間にどう落とし込んだのでしょうか。

西田:1階から4階までを「パブリックからプライベート」のグラデーションで設計しました。1階がオープンな社外共創スペース、2階が社内共創スペースとラボ、3階が社員のみの執務フロア、4階が食堂です。

4階建てという建物の特性を活かし、各フロアに異なる役割を持たせながら、「パブリックからプライベート」へと段階的につながるスタッキングを構成したことが、設計上の大きなポイントです。

松木:1階には製品だけでなく部品やファブリックも展示し、これまでクローズにしていたものづくりの技術を外に開きました。共創の質を上げるための取り組みです。

吉野:2階のラボについては、秩序に縛られず、自由に試行錯誤しながら使い込める場所にしたいと考えました。そのため、壁をなくしてオープンにする一方で、床は6マスに区切り、プロジェクト単位で使えるようにしています。お互いに刺激し合える環境を目指しました。

西田:また、ラボは「デザインをしないデザイン」を意識しています。天井から電源を取れるようにすることでフレキシブルなレイアウトを可能にし、ホワイトボードも多めに設置しました。その他にも、プロダクトをそのまま置けるような大きなテーブルも用意しています。これも「自由に使ってもらいたい」という考えからの設計です。

グリッドが宿す精度と、地域課題から生まれた素材

床・壁・天井に施されたグリッドのデザインには、どのような意図があるのでしょうか。

武田:グリッドは、ものづくりを表現するための裏テーマとして取り入れています。500・1000・1500・2000mmという複数のグリッドを重ねることでラインを緻密に整え、精度の高さとものづくりへの気概を空間全体に宿しました。

吉野:日々働く中で「スケール感を自然に養ってもらいたい」という意図もあります。なんとなく見ているものが、実は寸法を意識して作られていると気づいてもらえるような仕掛けです。またITOKI DESIGN HOUSE SHIGAでは、チェアだけでなくソファなど大きなプロダクトの展開も見据えているため、感覚を掴めるように大きいグリッドも用意しています。

3階の没頭エリアや地域素材を使ったデザインには、どのような狙いがあるのでしょうか。

松木:工場で働く方々は時間に従って業務を進めており、以前は島型対向式の固定席で、常に周囲の視線を意識しながら働く環境でした。そこで、抱えているテーマに集中しながら創造的に取り組める場所として、没頭エリアを設けています。個人でも複数人でも対応できる利用しやすい空間にしています。

また地域素材も積極的に活用しています。地域課題を解決する素材をデザインに落とし込むことを念頭に置き、ヨシ(琵琶湖畔に自生する植物)と花崗岩を選びました。
ヨシは保全団体へ直接ヒアリングを行い、課題感を共有したうえでデザインに組み込んでいます。花崗岩は信楽焼のルーツを調べる中で着目した素材で、風化すると土砂崩れの一因になるという地域課題を知り、粉砕して天板に封入するなど素材として昇華させました。

ものづくりの現場から、新しいオフィスのあり方を発信する

リニューアルの成果と、今後の展望をお聞かせください。

松木:地方の工場オフィスのモデルとなることを目指し、地域課題を解決する素材をデザインに落とし込みました。実際にヨシ刈りイベントを工場主導で行うなど、新しい取り組みも生まれています。こうした動きが波及し、イトーキとして新しいものづくりにつながっていくことを願っています。

武田:現在は営業と連携し、お客様を工場に招いて製品や工場スタッフの働き方を深く知っていただく見学を実施しています。今後は設計事務所や経営層の方々にも広く見ていただくことで、それぞれの企業が働く空間のあり方を見直すヒントや、新しいオフィスのアイデアにつながればと考えています。

西田:共創を通じて、ものづくりの素晴らしさを改めて実感することができました。オフィスが変わることで新たな接点が生まれ、そこから新しいアイデアが生まれていく。ものづくりの企業として可能性が広がっていくと考えています。

これまで、多くの企業では本社オフィスの整備が進む一方で、地方の製造拠点では働く環境の整備が十分に進んでいないケースが多く見られました。一方で近年は、人材獲得やエンゲージメント向上の観点から、製造拠点の働く環境を改善したいというニーズが高まっており、その流れは今後さらに広がっていくと考えています。ITOKI DESIGN HOUSE SHIGAが、その一つのモデルケースとなり、製造業全体に良い影響を与えられる存在になれれば嬉しいです。

Details
Client

ITOKI DESIGN HOUSE SHIGA

ミッションステートメントに『明日の「働く」を、デザインする。』を掲げ、人を中心に据えた「空間」「環境」「場」づくりを行うオフィス家具メーカー・ITOKIのワーキングショールーム。地方企業における人材確保と働き方改革の先進モデルとして、これまでの働き方をアップデートさせた最新のワークスタイルを実践・提案。社員一人ひとりがワークスタイルやワークプレイスの創り手として積極的に新しい働き方を試し、挑み、高め合うことで、社員のエンゲージメント向上と生産性向上につなげるとともに、実践を通じた知見に基づくお客様への付加価値提案を行っている。

Data
所在地
竣工
面積
人数
滋賀県近江八幡市
2026年1月
2568㎡
113名
所在地 滋賀県近江八幡市
竣工 2026年1月
面積 2568㎡
人数 113名
Photo

神宮巨樹(OOKI JINGU)

「働く」のトレンドをつくる。

私たちがデザインするのは、オーダーメイドのワークプレイス。

働く人びとにとって、
「居心地のよい空間」とは?
「最高のパフォーマンスが発揮できる空間」とは?
「コミュニケーションが生まれる空間」とは?

ワークスタイルに正解がないように、
ワークプレイスの在り方も自由自在。

お客さまとつくるデザインの先に、「働く」のトレンドを創造します。

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