働く人の「第二の家」となるオフィスを目指して
—はじめに、本プロジェクトの方針を教えてください。
小野:住宅設備機器・建材メーカーであるLIXIL様が「第二の家」という新本社オフィスのコンセプトを掲げていたことから、「家らしさ」のあるオフィスを目指しました。
その中で意識したのは、一般的なオフィスの無機質なイメージを軽減するために、積極的に自然素材を取り入れること。もう1つは、エリアごとに天井や床の素材を変え、部屋を作るように空間を割ること。ヒューマンスケールの空間づくりを意識しつつ、目的に合わせて働く場所を選べるようにしています。
ディテールに関しては、家のイメージをもたらす照明・木・ルーバー(※)を工夫して取り入れながら、「家らしさ」を空間に落とし込んでいきました。
※羽板(細長い形状の薄い板)を隙間をあけて並行に並べたもの。主に日除けや通風、目隠しを目的として住宅などに取り付けられる。
オフィスらしくない照明をあえて取り入れてみる
—照明はどのような点を工夫したのでしょうか。
小野:一般的なオフィスの照明って、長方形のシーリングライトが多いですよね。もちろんこの物件でも設置しているエリアはあるのですが、一部をダウンライトやスポットライト、ペンダントライトにするだけで、ぐっと家らしさが増します。光の色も白ではなく暖色を選んでいるので、やわらかい光が届き、家にいるような居心地の良さを感じられると思います。
また、リビングと寝室で照明の種類が異なるように、オフィス内でもエリアに合わせて複数種の照明を使い分けて、空間の違いを演出しています。「第二の家」というコンセプトを因数分解して、家の中の部屋を一つずつ作っていったイメージですね。
「栓」を中心に、異素材をバランスよく配置
—木を取り入れる際のこだわりを教えてください。
板垣:LIXIL様ご指定の栓(セン)という天然の木材を中心に、使用する素材を選定していきました。全てを天然の木材で作るのはコスト的にも機能的にも難しいので、色味や光の当たり方が栓に近いシートやメラミン、クロスなども取り入れています。
最終的に床、天井、家具に別々の素材を使用しているのですが、全体を見たときに違和感なく、まとまりのある綺麗な空間に仕上がったかなと。
小野:エントランスから奥の会議室につながる通路脇の窓側ソファ席には、本物の栓を贅沢に使っています。ここは来客を会議室へ通すときに歩く所なので、家の外と中の接点=縁側と捉えていて。窓からの眺望の良さをいかし、料亭の庭を見ながら進む廊下のような空間づくりにこだわりました。
「面」の存在感を薄くすることで、オフィス感を解消する
—ルーバーにはどのような役割があるのでしょうか。
板垣:ルーバーは、オフィス感を解消するために取り入れています。といいますのも、壁や天井、床などの大きい「面」は、オフィスの広さを強調する要素。そのままだと家とは対照的な落ち着きのない空間になってしまうので、面をルーバーで構成することで存在感を薄くし、抜け感を演出しています。
小野:オフィス内のルーバーの木目や色は揃えていますが、真っ直ぐ立てるだけでなく頭上まで囲んだり、いろいろな素材の壁と組み合わせたりして、バリエーションを持たせています。また、日本家屋の格子戸をイメージした受付には、LIXIL様の「テラコッタルーバー」を使用しました。来客を迎える際に誇りを持ってくださるのではないか、という思いを込めて、お客様の商材をオフィスに取り入れています。
Photo:人物写真はイトーキオフィスにて撮影
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