働く環境のさまざまな壁を取り払う「Seamless」なオフィスへ
—はじめに、移転の背景とコンセプトを教えてください。
和田:今回の集約移転で達成したいことの一つに、コミュニケーションの醸成がありました。オックスフォード様は天王洲と日本橋に拠点が分かれていたため、他部署やお客様とコミュニケーションが取りづらい状況にあったのです。また、ショールームを充実させるとともに、グローバル企業の日本拠点としての訴求力を高めることも重要なミッションでした。
そこでご提案したのは、「Seamless」というコンセプトです。これまで当たり前とされてきたオフィス内の壁を物理的にも心理的にも取り払うことで、チーム・部署・会社全体・お客様とフラットにつながれる、新たなセンターオフィス兼開発拠点を目指しました。
そのうえで、創業者が大切にしていた起業精神・交流・信頼関係が従業員にも浸透するよう、知見を共有し合ったり、創造性を発揮したりできる仕掛けを取り入れています。
運用後を見据えた、回遊性の高い動線とゆとりのある空間づくり
—具体的にどのような仕掛けを施しましたか?
和田:コロナ禍を機にリモートワークが普及し、必ずしも自席が必要ではなくなったことから、座席の運用方法を固定席から選択型へ変更しました。集中作業スペースやチームキャンプ、定例会議・打ち合わせ、気分転換スポットなど、業務内容や気分に合わせて選べる8種類のスペースをオフィス全体に散りばめることで、従業員の動線が自然と交わり、これまで分かれていた2拠点間の交流が図れます。
また、社内外の人が立ち寄るコミュニケーションの起点を作るべく、ショールームと執務エリアの間にカフェエリアを設置しました。カジュアルな雰囲気かつ人が溜まる場所を作ることで、コミュニケーションに対するハードルを下げる狙いです。
ほかにも、通路の幅を広く取ったり、社内外の人が行き来しやすいようショールームを開けた作りにしたりするなど、人が行き交い、顔を合わせるゆとりのある空間づくりを意識しています。
多様な「快適さ」を受け止める、居心地の良い日本らしいインテリア
—続けて、インテリアのこだわりを教えてください。
和田:世界に向けて発信力を高める日本らしい意匠と、「オフィスの内装はこうあるべき」という固定観念を捨て、居住性の高さにこだわりました。そのため、温かみのある木を積極的に取り入れ、日差しが入る場所や人が集まる場所にはグリーンを配置しています。
また、リニューアルや選択型オフィス導入において、すべての従業員がすぐに新しい環境に順応できるわけではありません。特に、オックスフォード様のように専門的な領域で研究開発を行う企業の場合、画一的で整頓されたオフィスでは、かえって生産性を低下させてしまう可能性があります。
そこで重要なのが、人それぞれの「快適さ」を叶える受け皿を用意すること。執務エリアはオープンとクローズのメリハリを付け、エリアごとの居心地や景色の違いを体感できるよう工夫しています。
なかでも象徴的なのは、機器のメンテナンスを行うエリアです。写真の通り段ボールや機材でいっぱいになっていて、このような自席がなく自由度の高いオフィスでは御法度とされている状況かもしれません。しかし研究開発およびサービスに携わる従業員にとっては、必要な資材や設備が手の届く距離にあり、自分の仕事に集中できる環境こそが「快適さ」や生産性の向上につながると考えました。このように、オフィス全体で多様な働き方を許容することで、結果として従業員一人ひとりの「快適さ」を叶えるオフィスが実現したのではないでしょうか。
場所を作るだけでなく、そこで働く人に新しいつながりを提供する
—最後に、このプロジェクトの振り返りをお願いします。
和田:コロナ禍を経てコミュニケーションの大切さを再認識したこともあり、「コミュニケーションの醸成」はオックスフォード様とイトーキで共通して目指す、新たなオフィス構築のテーマでした。そこで新しい場所を作るだけでなく、人と場所、人と人が隔たりなくつながれる「手法」までをも構築することで、どこでも働ける今の時代に価値を発揮するオフィスが実現できたように思います。
実際に社内のコミュニケーション量が増え、部署間や世代間の壁が無くなってきているとの声をいただいており、ショールームのアテンド数も増加しているようです。
また、中古家具の寄付や環境に配慮した建材の使用など、SDGsに貢献できたことも印象に残っています。大型の機材を設置するなど業種特有の特殊な要件もありましたが、移転前の課題を解消するとともに、コンセプトを具現化したオフィスを作ることができました。
Photo:人物写真はイトーキオフィスにて撮影
オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社
産業用や研究用の高度な技術ソリューションを開発・製造し、グローバル展開する科学研究機器メーカー。次世代半導体・新世代通信・高機能材料・ヘルスケア・ライフサイエンス・量子技術・宇宙科学など、多岐にわたる分野でコア技術が採用されている。
所在地 | 東京都品川区 |
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竣工 | 2023年9月 |
面積 | 1,810㎡ |
人数 | 100人 |
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